2026年5月29日、経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省がまとめた「2026年版ものづくり白書」が公表されました。今年で26回目、250ページを超える報告書です。
製造業の経営者の方でも、全部に目を通している方はそう多くないと思います。今回はその中から、私たちが特に気になったデータをひとつ取り上げます。
稼ぐ工場は、何に投資していたのか
白書には、企業の稼ぐ力(EBITDAマージン:本業でどれだけ稼げているかを示す利益率)別に、直近3年間の設備投資の中身を比べたデータが載っています。
まず分かるのは、稼ぐ力に関係なく、どの会社も「設備の入れ替え・更新」と「既存設備の維持・補修」を最も優先しているということです。古くなった機械を入れ替え、止まらないように手を入れる。これはどの工場でも同じでした。
差が出たのは、その先です。「省力化・省人化」と「増産・販売力強化」への投資は、EBITDAマージンが10%以上の企業と10%未満の企業とで、回答率にはっきりした差がありました。稼ぐ力の高い会社ほど、人手を減らす投資と、売る力を伸ばす投資に踏み込んでいたということです。

白書はあわせて、日本の製造業の1人当たり労働生産性が、米国の約3分の1、ドイツの約半分にとどまっていることも示しています。
「能力の差」は、どこに表れるのか
このデータは、私たちには経営判断の差に見えました。
機械は同じように古くなり、人は同じように減っています。置かれている条件は、それほど変わりません。それでも、入れ替えと補修で投資を終える会社と、その先の「人が減っても回る仕組み」「もっと売れる仕組み」にまで投資する会社とがある。
守りの投資だけで手いっぱいになっているのか、それとも攻めの投資にまで目が届いているのか。白書のデータから読み解ける経営者の能力差とは、この判断の差ではないでしょうか。
WEB担当の目には、こう見えました
私たちはWEB制作を生業にしていますので、製造のプロではありません。ただ、いろいろな工場のサイトを拝見してきた立場として、ひとつ気になった言葉があります。
「販売力強化」です。
製造業で販売力を強めると聞くと、営業担当を増やす、展示会に出る、代理店を開拓する、といったことを思い浮かべる方が多いと思います。どれも人が動くことで成り立つ施策です。
けれど白書の厚生労働省のパートでは、人材の確保・定着と技能継承が大きく取り上げられています。人が減っているのは製造現場だけではありません。営業も同じです。人を増やして売る力を伸ばすやり方は、これから先、思うようにいかなくなっていきます。
では、センターピンはどこにあるのか
私たちは「センターピンの隣に、WEB有り。」という言葉を掲げています。ボウリングで1番ピンを外すと、どれだけ強く投げても全部は倒れません。会社の課題も同じで、急所を外した施策は労力のわりに結果が出ないと考えています。
工場の中では、熟練者の技能に頼り切らないよう、データや仕組みに置き換える取り組みが進んでいます。白書でも、熟練者への依存から脱却するためのデジタル活用の事例が紹介されています。
ところが、営業の側はどうでしょうか。御社の技術の何が優れているのか。なぜ他社では難しい加工ができるのか。それを語れるのは、たいてい社長かベテランの営業だけではないでしょうか。技能は会社に残そうとしているのに、その技能の価値を語る言葉は、人の頭の中に置いたままになっている。
製造業の販売力強化のセンターピンは、「技術の価値を、人に頼らず語れる状態を作れるか」ではないかと私たちは考えています。人が減っても、技術の価値が伝わり続ける仕組みを持つこと。それが、白書の言う攻めの投資としての販売力強化だと思います。
ここまでが、今回の白書から私たちが考えたことです。

ここから先は、WEBのプロとしての話です
白書のデータを見ていて、もうひとつ気づいたことがあります。多くの会社のWEBサイトのリニューアルが、「設備の入れ替え」と同じ発想で行われている、ということです。
古くなったから新しくする。見た目が時代遅れだから整える。スマートフォンに対応していないから直す。どれも必要なことですが、白書の言葉に当てはめれば、これは守りの投資にあたります。
稼ぐ工場が、機械を入れ替えたその先にも投資していたように、サイトにも「入れ替え」の先があるはずです。
たとえば、加工事例を見た技術者が、自社の課題を解決できる会社かどうかをその場で判断できること。営業担当が会う前に、技術の強みが相手に伝わっていること。新しい取引先の担当者が社名で検索したとき、何ができる会社なのかがすぐに分かること。こうしたサイトは、人が動かなくても働く販売力になります。
同じリニューアル費用でも、見た目を新しくするだけの守りの投資にするのか、技術の価値を語り続ける攻めの投資にするのか。ここにも、白書が示したのと同じ判断の差が表れるのだと思います。
御社のサイトはいま、守りと攻め、どちらの投資になっているでしょうか。
ご参考まで
御社のサイトが「入れ替え」で止まっているのか、販売力として働いているのか。社名で検索したときに何が出てくるか、訪れた技術者がどこで帰っているか、生成AIは御社の技術をどう説明するか。この3点を無料でお調べしています。結果によっては、「今のままで十分です」とお伝えすることもあります。
出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2026年版ものづくり白書」(2026年5月29日公表)。設備投資内容のEBITDAマージン別比較は図422-4、1人当たり名目労働生産性の国際比較は図110-5に基づく。
