2026年5月29日に公表された「2026年版ものづくり白書」に、製造業の値上げの現状を示すデータが載っています。
この3年間で製造業が実施した企業行動を聞いた調査で、最も多かったのは「価格転嫁」、つまり取引先への値上げでした。その割合は80.6%。賃上げ(79.4%)や設備保全(64.5%)を上回って、トップです。
製造業の約8割が、すでに一度は値上げに踏み切っているということになります。
上乗せできたもの、できなかったもの
値上げで上乗せできたコストの中身を見ると、原材料価格の高騰分が89.4%、労務費の高騰分が73.9%、エネルギーコストの上昇分が61.4%でした。
一方で、関税の上昇分を上乗せできた会社は4.9%にとどまります。上乗せしなかった理由として多かったのは、「影響を精査しきれていない」(29.4%)と、「関税を理由にした値上げは理解が得られない、交渉が難しい」(10.5%)でした。
もうひとつ、気になる数字があります。今後1年以内に値上げを予定している会社が半数を超えたのは、輸送用機械(58.3%)と鉄鋼業(56.5%)の2業種だけでした。

WEB担当の目には、こう見えました
私たちはWEB制作を生業にしていますので、経営のプロではありません。ただ、いろいろな工場を外から見てきた立場として、ここまでの数字を並べると、ひとつの流れが見えてくるように思いました。
製造業の8割は、この3年で一度は値上げをしました。一方で、これからの1年に値上げを予定している会社が半数を超えた業種は、2つしかありません。つまり多くの工場はいま、「次の値上げ」をどうするかという段階にいます。そしてこの次の値上げは、最初の値上げよりずっと難しいのではないでしょうか。最初と2回目とでは、事情がまったく違うからです。
最初の値上げには、誰が聞いても分かる理由がありました。原材料が上がった、電気代が上がった。取引先も同じ状況にあるので、説明すれば納得してもらえます。
ところが2回目以降は、そうはいきません。分かりやすい理由は、もう使ってしまいました。関税のように影響が見えにくいものは、自社でも説明しきれず、相手にも理解されにくい。関税の上乗せが4.9%にとどまっているのは、その象徴に見えます。
多くの工場が次の値上げに踏み切れずにいるのは、上げたくないからではなく、上げる理由を説明しきれる自信がないからではないでしょうか。
では、センターピンはどこにあるのか
私たちは「センターピンの隣に、WEB有り。」という言葉を掲げています。ボウリングで1番ピンを外すと、どれだけ強く投げても全部は倒れません。会社の課題も同じで、急所を外した施策は労力のわりに結果が出ないと考えています。
お客様が値上げを「裏切り」と感じるのは、値段が上がったからというより、上がる理由が見えないからではないでしょうか。理由が見えていれば、値上げは納得に変わります。見えていなければ、同じ金額でも不信になります。
そして2回目以降、取引先が見ているのは、もうコストではありません。「この会社は、この値段に見合うのか」という一点です。
だとすると、値上げのセンターピンは交渉術でも原価の説明資料でもなく、「自社の価値が、相手に正しく理解されているか」ではないかと私たちは考えています。理解されていれば、値上げは交渉ではなく確認になります。「あの会社なら、値上げされても頼みたい」という判断が先にあるからです。
厄介なのは、実力はあるのに正しく評価されていない工場が多いことです。取引先の担当者が代わった途端、値段だけで比較されるようになる。前任者が知っていた価値は、引き継ぎ書には書かれないからです。
かしこい値上げの方法
ここまでをまとめると、かしこい値上げの方法は2つの準備に整理できます。ひとつめは、上げる理由を、自社で説明できるようにしておくことです。原材料、労務費、エネルギー。何がどれだけ上がったのかを把握しておく。白書で「影響を精査しきれていない」が最も多かったことを見ても、まずここが最初の壁になっています。
ふたつめは、値上げを切り出す前に、自社の価値が相手に伝わっている状態を作っておくことです。コストの説明は「なぜ上げるのか」には答えられますが、「なぜこの会社に払うのか」には答えられません。そこに答えるのは、日頃から伝わっている価値です。
かしこい値上げとは、うまく切り出すことではなく、切り出す前の準備で決まる。私たちはそう考えています。
ここまでが、今回の白書から私たちが考えたことです。

ここから先は、WEBのプロとしての話です
では、価値が伝わっている状態は、どこで作られているのでしょうか。
取引先に新しい担当者が着任すると、多くの方はまず社名で検索し、会社のサイトを開きます。そこに技術の背景や実績の中身が書かれていれば、それが評価を形づくります。会社概要が数行あるだけなら、評価の材料は見積書しかありません。
最近は、人が読む前に生成AIが読んで要約し、その要約が相手に届く場面も増えてきました。自分の知らないところで、自社の説明が作られ、配られているわけです。
念のため申し上げておくと、会社を格好良く見せましょう、という話ではありません。実態より大きく見せれば、後で期待外れと言われるだけです。必要なのは、本当の実力と、それが発揮されたときにどれだけ役に立つのかを、正確に理解してもらうこと。飾るための表現ではなく、正しく評価されるための表現です。それをどこでやるかと考えていくと、この時代はウェブサイトに行き着くことが多い、というだけの話です。
製造業の8割は、すでに一度値上げをしました。差がつくのは、次の値上げです。
ご参考まで
御社の実力が、外からどれだけ伝わっているか。検索したときに何が出てくるか、訪れた方がどこで帰っているか、生成AIは御社をどう説明するか。この3点を無料でお調べしています。調べた結果、「今のままで大丈夫です」と申し上げることもあります。
出典:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2026年版ものづくり白書」(2026年5月29日公表)。価格転嫁の数値は、同白書作成のための三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査(令和7年度)に基づく。
